「信頼はお金より強い」——税理士・作家 安江一勢が語った、すべての土台にあるもの
ゲスト:安江一勢(税理士・経営者・作家)/ファシリテーター:岡本亜由子さん
- はじめに
- 1. 「3年で税理士試験に合格」の裏側
- 2. 深夜2時までサイゼリヤ、睡眠3〜4時間
- 3. 「そんな人生、嫌だな」——ギュッと縮めた理由
- 4. 通帳の残高を見たとき、虚しかった
- 5. お金は「交換」してこそ生きる
- 6. 転機は「あほらしくなって使った」こと
- 7. 「命を預けられる人」——信頼は小さな積み重ね
- 8. 信頼する人は「絞る」。好きはライクではなくラブ
- 9. 【Q&A】会社員や主婦は、どう信頼をお金に変えるのか
- 10. 【Q&A】信頼を積んでいるのに、結果が出ないときは
- 11. 【Q&A】非効率なことこそ、信頼が貯まる
- 12. 【Q&A】10・20の法則——メンターの選び方
- 13. これから叶えたい夢——ママが活躍できる場をつくる
- おわりに
- お知らせ
はじめに
お金も、実績も、人脈も大切。 でも、そのすべての土台にあるものは何だろう——。
そんな問いからスタートしたのが、岡本亜由子さんのラジオチャンネルにお招きいただいた今回のライブでした。テーマは「信頼」。ゲストは、税理士でありながら作家として『お金よりも大切なモノ』などを世に送り出している安江一勢さん。
当日は、本を10回以上読み込んでこられた方が事前に質問シートまで作ってくださるほどの熱量。約1時間、笑いあり、深掘りありの濃密な時間になりました。
このレポートは、リアルタイムで参加できなかった方のために、当日語られた内容を再構成したものです。
1. 「3年で税理士試験に合格」の裏側
まずは自己紹介から。
- 現在32歳(大谷翔平選手と同世代)
- 26歳で独立起業、現在3社を経営
- 税理士事務所
- 作家業/電子書籍の出版社
- 起業塾「潤沢クラブ」
- 税理士試験合格は23歳のとき
税理士試験は合格率およそ2%。しかも合格までの平均年数は約10年。合格者の平均年齢は60代で、20代の税理士は全体の0.6%、30代でも10%しかいないという世界です。
その試験に、安江さんは3年で合格しました。
「長く勉強するのは無理だなと思ったので、3年で取ったんです。10年はショートカットしました」
当時の勉強時間は、1日15時間が平均。多い日は18時間、20時間。
「6時間や8時間勉強すると『結構やったな』という感覚があると思うんですけど、その当時は本当に18時間、20時間やっていたので」
しかもこれ、勉強だけをしていたわけではありません。
2. 深夜2時までサイゼリヤ、睡眠3〜4時間
背景にあったのは、お金の問題でした。
14歳のとき、父親が借金を抱えて夜逃げ。京都の呉服屋の四代目として、私立の小学校に通うような「お坊ちゃん」だった生活は、一夜にして消えました。
本当は中卒で働くつもりだったところを「高校だけは行ってくれ」と言われて進学。そこで簿記と出会い、福岡の専門学校へ。
しかし学費は2年間で数百万円。母子家庭で親には出せません。
- 学費はすべて奨学金
- 生活費も仕送りに頼らず自分で稼ぐ
- 深夜2時までサイゼリヤでアルバイト(バイトリーダーまで務めた)
- 帰宅して3〜4時間睡眠、残りはすべて勉強
「お金がなくて勉強しました。本当に、お金がないから勉強したんです」
20時間勉強した日のことを、安江さんはこう振り返ります。
「本当に死にかけました。寝る前に、歯の神経が全部悲鳴を上げるんです。あれは忘れられないですね」
さらに、これまでほとんど話してこなかったというエピソードも。
専門学校時代のある1年間、「毎日、最初から最後まで絶対に学校にいる」という自分ルールを決めていたそうです。
「台風の日も行きました。ルールで決めたので、台風より学校のほうが優先順位が上だったんです。……開いてなくて、先生に怒られました」
3. 「そんな人生、嫌だな」——ギュッと縮めた理由
なぜそこまでできたのか。理由は2つあったといいます。
ひとつは、生存のため。
「学費も払っていたので、税理士が稼げる仕事にならないと人生詰むなと思っていたんです」
もうひとつは、憧れられなかったこと。
税理士の合格体験記に、20年かけて合格した人の話が「美談」として載っていた。ディズニーランドのアトラクションの待ち時間に法律の勉強をした、というエピソードまで。
「それを美談として語っているのを読んで、そんな人生は嫌だなと思ったんです。家族ができたときに、家族にちゃんと時間を使いたい。これは理想じゃないなと思って、ギュッとしました」
そしてもうひとつ、14歳の夜逃げが残した感覚。
「夜逃げって、友達にも何も言えずにいなくなるしかないんですよ。明日いなくなる、という感じ。全部失うんだなと思ったときに、欲しいものややりたいことがあるなら、1分でも1秒でも早くやらないといなくなるんだな、と。当たり前は当たり前じゃない——それが原体験として刻まれてしまったんです」
だからこそ、火事場の馬鹿力を10年続けたら死んでしまう、と安江さんは言います。
「だから、結果を出すということを大事にしています」
4. 通帳の残高を見たとき、虚しかった
試験に合格し、就職。半年ほど経ち、初めてのボーナスが入った22〜23歳のころ。
ゆうちょの通帳の残高を見て、安江さんは強い虚無感に襲われます。
「お金があればもっと自由になれると思っていたし、毎日が充実すると思っていたんです。そのために死ぬ直前まで勉強してきたのに、お金が貯まっただけでは何も変わっていなかった。むしろ燃え尽きていて、ワクワクすらない」
専門学校時代は、お金も時間もないから飲み会はすべて断ってきた。だから友達も多くない。
「税理士だから、一生食える仕事は持っている。ナンバーツー候補として採用もされていて、年収もある程度確保されている。何十年と安定は確保されているのに——何もなかったんですよね」
このライブで印象的だったのが、「ゆっくり街を歩く」という言葉でした。
「働きながら勉強していたので、仕事が終わったらすぐ学校へ行って勉強、という生活だったんです。ゆっくり街を歩くことができなかった」
5. お金は「交換」してこそ生きる
ここから、税理士としての専門的な視点も交えた話に。
「100万円貯まったら使おう、とよく言いますよね。でも人って、100万貯まると次は150万貯めたくなる。きりがないんです」
貯金が中心、貯金が正義になると、「貯まったものが減る」ことが怖くて使えなくなる。
「お金って、使えなくなると死ぬんですよ。意味がなくなってしまう」
そもそもお金は、物々交換の対価として生まれたもの。ものと交換して幸せを得るための道具だったはずなのに、大事にするあまり貯めるだけになってしまう。
「交換できないから、結局満たされていかない。変わらないんです」
老後2000万円問題のようなニュースが出れば「もっと貯めなきゃ」と煽られ、貯金が無理ならNISAへ。
「NISAが悪いわけではまったくないんです。ただ、投資はお金に働いてもらうもの。裏を返せば使えないお金なんですよね」
6. 転機は「あほらしくなって使った」こと
では、その虚無感から何が安江さんを引き上げたのか。
「あほらしくなって、使おうと思ったんです」
当時、学校の後輩たちに勉強を教えていたこともあり、意味もなくご飯をおごりまくった。
「ひたすら使ってみたら、貯めていたときより、使ったときのほうが楽しかった。充実感があったんです」
そしてもうひとつの転機が、一冊の本でした。
永松茂久さんの『言葉は現実化する』。安江さんはこの本を38回読んだといいます。
その本に書かれていた「人生を変えるための条件」——メンターとの接触頻度を高めること、否定されない空間で過ごすこと。ちょうど実践しようとしていたタイミングで、永松さんと、そのお弟子さんである朝井和彦さんのコラボ講演会に参加します(当時、安江さんは福岡、永松さんは東京)。
そこで出会った朝井さんが、のちに人生の師匠となる方でした。
「浅井さんは『人生はお金じゃない、人だ』という人だったんです。そして、本に書いてあった“否定されない空間”を、まさに作ってくれていたのが朝井さんのコミュニティだった」
興味深いのは、安江さんがこう続けたことです。
「正直に言うと、そのときの永松さんの講演の内容は全然覚えていないんです。でも、本は痛烈に頭に刻まれていたから行動できた。そこが本のすごさだなと思っています」
「届く言葉って、結局6万字、10万字という情報量を、人間は1回では絶対に受け取れない。そのときの自分の状態によって、受け入れるもの、拒否するもの、見なくていいものが変わってくるんです」
そして、この体験があったからこそ「自分も本を書きたい」と思うようになった——それが今の作家業につながっています。
7. 「命を預けられる人」——信頼は小さな積み重ね
ここからが本題、「信頼」の話。
安江さんが編集長やお世話になっている方々について語るとき、こんな言葉が出ました。
「矢が飛んできたら、僕は盾になりますよ」
なぜそこまで信頼できるのか、と聞かれた安江さんの答えは、
「命を預けられる人だなと思えたからです」
では、その「命を預けられる」という感覚はどこから生まれるのか。
「自責であるとか、言行一致であるとか。普段の関わり合い方の小さい信頼が溜まって、積み重ねになって、濃さになっていくのかなと思っています」
福岡と東京。実際に会う機会はそう多くありません。それでも、
「SNSがあってつながれる時代なので、できることってたくさんあるなと思っていて。常に気にかけてくれるし、僕も気にかけさせていただいている。小さい積み重ねでしかないんですよね。言葉と、行動と」
8. 信頼する人は「絞る」。好きはライクではなくラブ
ここで安江さんが「セットで絶対に話さなきゃいけない」と付け加えたのが、信頼する相手は絞ったほうがいいということ。
「僕らのリソースには限りがあるので、1000人の人にコツコツ信頼を積み続けるのは無理だと思うんです」
だから、まずは守りきれる人数から。
「最初は少なくていい。見きれる人たちじゃないと、関係は深まらないので。数を絞って、ひたすらコツコツ積み上げていくと、周りを信頼できるようになる。そして結果として、自分自身を信頼できるようになるんです」
「周りの人が自分のことをめちゃくちゃ信頼してくれるから、結果として自分を信頼できるようになる、ということもあると思います」
では、どう絞るのか。
「好きな人でいいと思いますよ」
『移動する人はうまくいく』の長倉顕太さんに「一緒にビジネスをする基準は?」と尋ねたとき、返ってきたのも「好きなやつだよ」という答えだったそう。
ただし——
「ここが結構大事なんですけど、好きはライクじゃなくてラブなんです。愛でつながれる人かどうか。だから命をかけられるんだと思います」
「AIの時代だからこそ、ラブでつながることはめちゃくちゃ大事。じゃないと、いい仕事もできないし、いい関係性も築けないと思うんです」
9. 【Q&A】会社員や主婦は、どう信頼をお金に変えるのか
起業している人が信頼からお金を得る、リピートが生まれる、というのはイメージできました。でも一般的な会社員の方や主婦の方は、どんなふうに信頼を積むとお金につながるのでしょうか。
「実は、会社員の人のほうがやることはシンプルなんです」
会社、お客さん、同業者、部下に対して、自分にできることをしてあげる。
- 疲れていそうな人に差し入れをする
- 連絡をこまめにする
「僕も会社員時代からやっていました。そうすると、相談がどんどん増えるんです。社内の相談も、お客さんの相談も、全部自分に集まってくるようになる」
そして、ここがポイント。
「相談が集まるということは、給料が上がるチャンスなんです。結局、物事を解決していく人が稼げる人なので。相談される人、頼られる人になる。そのためには『こいつに話せばなんとかなる』という小さい積み重ねかなと思います」
主婦の方の場合は、相手が旦那さんか、子どもか、ママ友か。
「いつか起業したいと思っている方なら、ママ友や社会の悩みを見て『これが欲しいんじゃないか』と考えたり、実際に解決したりすると、勝手に生まれていくと思うんです。信頼を積んでおけば、いつでも起業できるので」
実際、安江さん自身が26歳で起業したときは、お客さんゼロ・貯金ほぼゼロ。それでも前職のクライアント3社が、あとから合流してくれたといいます。
「今も僕の売上の95%は紹介です。信頼があると、集客に困らなくなるんですよ。無理に中途半端にお金を稼ごうとするより、信頼を積みまくったほうが、起業の成功率も上がるし、もっと楽にお金を稼げるんじゃないかなと思います」
10. 【Q&A】信頼を積んでいるのに、結果が出ないときは
「信頼を積んでいるつもりなのに、そうならないんです」という人は、積み上げ方が違うということですか?
「この質問、結構多いんです」と安江さん。挙げられたポイントは3つ。
① 相手の「感動の分岐点」を超えられているか 人は感動したときに動く。そのラインを超えられていない可能性がある。
② 広げすぎていないか 50人にやっているなら、10人に絞ってみる。
③ 相手はギバーか、テイカーか 「やっている相手がテイカーだと、意外と生まれないんです。ギバーな人に信頼を積んでいくといいですね」
関連して、「人を見る目がない人はどうすれば?」という問いにはこう答えています。
「僕は、紹介された人にしか会わないんです。そうすると、紹介してくれた人の信頼を通して人を選べるので、『この人は大丈夫かどうか』を自分で考えなくていい。信頼していない人からの紹介であれば、関わらないようにしています」
11. 【Q&A】非効率なことこそ、信頼が貯まる
本に「非効率なことで信頼が溜まる」とあり、クライアント一人ひとりに月1でお手紙を書いている、と書かれていました。他にも「これをやったら信頼が溜まる」という非効率なことはありますか?
ここで明かされたのが、安江さんが59ヶ月続けている取り組みです。
- 4000字ほどのオリジナルコラムを毎月執筆(原稿用紙10枚分)
- 「事務所通信(社外報)」として紙に印刷し、封筒で郵送
- 封筒には、一人ひとりに向けた手書きメッセージを添える
- 送る相手は、深く関わるクライアント約30人に絞っている
「子どもが生まれてめちゃくちゃ忙しくて、寝ていない時期もやっていました。そこからお金は1円も生まれていません。むしろお金がかかっている。やろうと思ってやっているだけ——優先順位を上げているだけなんです」
そしてこの一言が、当日いちばん響いた言葉かもしれません。
「非効率なことって、優先順位を上げないと誰もやらないんですよ。だから『時間がない』『お金がない』という言い訳が通用しないレベルになる。みんなやらないから、やった分だけ差が出るなと思っています」
なぜ電子ではなく紙なのか。
「電子だと、たぶん読まれないんです。紙で届くから、メッセージがあるから読まれる。名刺交換のお礼も、LINEやDMやメールでできる時代ですけど、はがきや手紙で届いたら読んじゃいますよね。アナログって、結構強いんです」
「作られたDMより、手の込んだもの、手書きのものは印象に残る。次につながるし、返してくれたり、感謝が湧いたりする。時間もお金もかかって、コスパは最悪。非効率なんですけどね」
12. 【Q&A】10・20の法則——メンターの選び方
本に「10歳上、20歳上の方をメンターとして近くで学ぶといい」とありました。安江さんご自身は、どんな方を参考にされてきたのですか?
これは明確です、と安江さん。
10歳上——すばる舎の小寺編集長、そして人生の師匠である朝井和彦さん。専門学校時代の恩師の先生も10歳ほど上だったそう。
「このお二人のおかげで今の人生があるのは間違いないです」
20歳上——『移動する人はうまくいく』の長倉顕太さん。
「お二人がやっていること、考えていることが、僕の今後の道になっているので、すごく大事にしています」
「近くで学ぶ」の“近く”とは、物理的な距離のことなのか?
「連絡が取れるかどうかでいいと思います、今の時代は。あとは、どちらかといえば両思いのほうがいいですね。これは結構大事です」
「僕は、何者でもない、何もなかったときにこれで人生を切り開いてきたので、再現性はあると思っています」
なお、年齢差については補足も。
「年齢もそうですけど、精神年齢・ステージ年齢のような捉え方でいいんじゃないかなと思います」
13. これから叶えたい夢——ママが活躍できる場をつくる
最後に、これから叶えていきたい夢について。
安江さんには4歳の双子の男の子と1歳の子、3人のお子さんがいます。双子が生まれたとき、実家も義実家も近くにおらず、夫婦2人で育てました。
「育児のヤバさを原体験として感じたんです。一方で、その尊さもめちゃくちゃ感じた」
現在、事務所のスタッフは全員がママ。
「ママが働きやすい、ママが活躍できる場は絶対に作りたい、とずっと思っています」
そして、男性だからこそ言えることとして——
「男性の『俺、育児やってます』って、9割くらい嘘だと思っているんです。育児って、そんな『やる』ものじゃないじゃないですか」
当時は仕事の時間を大幅に減らしながら、それでも稼がなければならなかった。
「お金と人生に、すごく向き合った育児期間でした」
この体験が、女性向けの起業塾「潤沢クラブ」につながっています。
おわりに
「信頼はお金より強い」——本のメッセージが、体験と実践の両方から立体的に語られた1時間でした。
まとめると、当日語られた「信頼の積み方」はとてもシンプルです。
- 相手を絞る(守りきれる人数から)
- 好き=ラブでつながれる人を選ぶ
- 小さいことを、言葉と行動で積み重ねる
- 非効率なことの優先順位を上げる
- 結果として、自分を信頼できるようになる
そしてもうひとつ。
「信頼を積んでおけば、いつでも起業できる」
今すぐ結果に直結しないことを、それでもやり続けられるかどうか。そこに差が出るのだと思います。
お知らせ
- 潤沢クラブ 第3期:9月16日スタート・募集中 起業塾っぽくない起業塾。生き様コンサルタントのアタール恵利子さんと共に開催。夫婦での受講や、お子さん連れでの参加者も多数。最終回にはプレゼン大会があり、優勝賞金30万円+電子書籍出版権・コンサル権も。
- 10月28日(火)東京イベント:すばる舎・小寺編集長らと開催予定 詳細は「すばるーむ(すばる舎さんのオープンチャット)にて告知されます。
- 安江一勢のオープンチャット/YouTube:通勤の行き帰りにライブ配信も。ラジオ形式のコンテンツも配信中。
改めて、岡本亜由子さん、そしてご参加くださった皆さま、たくさんのコメントを本当にありがとうございました。
